概要
人が真実から目を背ける限り、その闇から妖怪が生まれる──
ぬらりひょんと呼ばれる穀潰し男と警官志望の元軍人が、
人をだまし惑わせる妖の正体を解き明かす!
時は明治末期。日露戦争が終わって早一年が経とうというのに、民衆の生活は困窮するばかり。兵隊時代の貯蓄が僅かとなった僕こと犬飼馬鞭助(いぬかいまめすけ)は、武を活かす職を求めて東京に流れついた。ひょんなことから、牛乳店を営む三木りん(みつきりん)の屋敷に居候して、警官職の試験を受けることに。
居候を続けるうちに、三木牛乳店に「ぬらりひょん」と綽名される男が、寄生していることを知る。
その男の名は日下狂四郎(くさかきょうしろう)。洋装を身にまとった、ちぢれたザンバラ髪のいかにも怪しい男で、「妖怪狩り」を生業にしているという。民衆の無知蒙昧に付け込み、人心を流言飛語で惑わす連中を、飯の種にしているとのこと。
ならばと、僕は狂四郎という人物を見定めるため、天狗の祟りで奇怪な犬が生まれた村の調査に同道することになった…。
第3回黒猫ミステリー賞特別賞受賞、痛快デビュー作!
目次
第一話 ぬらりひょんの住む家
第二話 天狗犬
第三話 化け猫の怪
第四章 べとべとさん
著者紹介
暁烏 壱才(あけがらす いっさい)
1991年生まれ。北陸在住。恐らく懐古主義者。古いものに触れることが多くなった。時代についていけなくなりつつあるのかもしれない。
「妖怪記」で第3回黒猫ミステリー賞特別賞を受賞。『日下狂四郎の奇奇怪解』と改題し作家デビュー。